トルコ南東部、ユーフラテス川の西60キロに位置するガジアンテップ。
人類初の居住地域のひとつであるこの地は世界で最も古といわれるメソポタミア文明から
ヒッタイト、ビザンチン、アラブ、十字軍、アルメニア、オスマンと
実に様々な文明と歴史が積み重なり、その足跡が今も残っている。
ガジアンテップ最大の見所となる「ゼウグマ・モザイク・ミュージアム」へ。
地下1階から2階まで、紀元1〜3世紀頃の戦争の彫刻、ユーフラテス川河畔の邸宅で見つかった貴重なモザイクが展示されている。
関係ないが、頭の上にうず高く積んだ通りすがりのシミット(パン)売りが何気にすごい。
博物館前の中央分離帯に置かれたシルクロードをイメージしたキャラバンのオブジェ。
その両側を車が猛スピードで駆け抜ける。スピードの時代にあえてラクダで旅をするとしたら、
今となってはとんでもなく贅沢なことだろう。
ところで私は一度、エジプトの夜の砂漠を5時間ほどラクダに乗って移動したことがある。
お尻は痛いし、突然猛ダッシュされ振り落とされそうになりながら必死にコブにしがみついた。
そして機嫌を取るように首を撫でながら背中に乗せてもらった。
今となっては良い思い出だが、夜の砂漠は体の芯まで冷えるし辛かった。
だけど砂漠に残された骨となったラクダの遺骸や満天の星は生涯に忘れることはないと思う。
館内は1990年代のダムの建設によって発掘されたローマ時代のユーフラテス河畔に住む裕福な商人や高官たちの家の床や壁、プールの底に装飾されたモザイクと柱を当時の状況を再現して展示されている。
ギリシャ神話の神々が描かれた壮麗なモザイクは相当な見応えがある。
時間があれば半日かけてじっくりと鑑賞したいくらい素晴らしい。
ヒューレット・パッカード社の支援で行われた邸宅とモザイクの救出発掘調査プロジェクトで多くが救出されたものの、遺跡の3分の1は湖の底に沈んでしまったそうだ。
写真は2世紀頃に制作されたオケアノスとテテュス。
高度な修復技術とはいえ、千年以上前のものとは思えない
細部まで精巧に表現された完成度の高いモザイク画の数々。
当時の富裕層の暮らしぶりが目に浮かんできます。
最大の見どころは2階の暗室に飾られている2世紀頃に創作された「ジプシーの少女」。
1960年代にゼウグマ遺跡場で盗掘され、美術商を介してアメリカの州立大学が購入し
同校内の美術センターに展示されていたが、2018年に無事に里帰りを果たした。
このモザイクの少女、目力がハンパない。目や眉毛、髪の質感が本当にリアル。
想像していたよりもサイズがとても小さいが、どこから見ても少女に見つめられている。
いわゆるレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザ効果
モナリザよりも500年も前に描いている。いろんな意味で神秘的なモザイクだ。