近頃、日本にも増えてきた「サードウェーブコーヒー」。アメリカの第3次コーヒー文化を指す言葉。ファーストウェーブは1970年代頃までの大量生産・大量消費型のコーヒー文化。いわゆるファミレスのおかわり自由コーヒー。セカンドウェーブコーヒーを代表するお店がスターバックスコーヒー。高品質の豆とエスプレッソマシーンを使用するシアトル系コーヒーの文化が世界でもてはやされた。
そしてサードウェーブ。農家からカップまでのプロセスを重視し丁寧にハンドドリップで淹れる「クラフトコーヒー」。深煎りが中心だったセカンドウェーブに対してサードウェーブは浅煎りの豆で淹れた強い酸味が特徴。「一杯ずつ丁寧に淹れるスタイル」これってつまり日本の喫茶店スタイル。時代の新潮流と呼ばれるサードウェーブ、実は日本の喫茶店文化の影響を受けているのです。そんなサードウェーブコーヒーの個性を確かめるべく、聖地サンフランシスコのカフェを巡ってみた。
ミッション地区バレンシアストリート沿いにある「Four Barrel Coffee」は、サードウェーブの中心的存在ともいえるロースタリー。店内に入ると左手にスローバーというシングルオリジンコーヒーのハンドドリップカウンター。ここではスタッフとコーヒーや日常の会話を楽しみながらコーヒーができるまでをゆっくり楽しむ。入口と正面の通常の注文カウンターの間の広い空間も特徴的。お客さん同士で立ち飲みながら会話を楽しんでいる。
注文カウンターの奥は焙煎所。イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコでヴィンテージの焙煎機を使っての手作業は逆に新鮮に映るのだろう。目の前で焙煎され、人の手から手へとつながるハンドクラフトコーヒーは、職人魂が込められている。洗練されていない無骨な感じもまたいい。
壁際に並ぶ木製のテーブル。アナログを推奨するフォーバレルコーヒーの哲学から店内はwifiがない。画面ばかり見ていないで会話を楽しもうという図い。
一口飲むと澄んだ口当たりで酸味が前面に現れ、徐々に苦味と深みが押し寄せてくる。ウエストコースト・ジャズを代表するブルーベックの「テイク・ファイヴ」のような不思議なリズムの魅力と重なる。
ゲイタウンのカストロ地区にも気になるサードウェーブコーヒー が点在します。
カストロ地区のリヴァリーコーヒーはおしゃれなサードウェーブコーヒー。テラス席に座っている人からスノッブな匂いがプンプン。店内は10人ほどが座れるスペース。テラスは4席。
アイスアメリカーノを注文。うっすいのが出てきたと思ったら、酸味と苦味のバランスが良いスッキリでしっかりした味わい。アボガドトーストやラップ系など食事も充実。
サードウェーブコーヒーのトレンドを日本に吹かせた「ブルーボトル コーヒー」の記念すべき第一号店。販売のみのkioskで周りに人が集まっている。
ブルーボトルコーヒーの創業者は、注文を受けてから一杯一杯ドリップしてコーヒーを淹れる日本の喫茶店に影響を受けてカフェを始めたという。確かにアメリカでそのようなカフェはなかったし、ヨーロッパでもドリップコーヒーはあまり見かけない。私たちにはあたりまえでも外から見たら凄いと思うことってたくさんあるのだろうな。ガラパゴス日本万歳。
サードウェーブコーヒー と呼ばれる店を飲み比べてみると、どこも酸味が特徴的で微妙な個性はあれどそれほど大きな違いはないなというのが正直な感想。だけどブルーボトルの水出しアイスコーヒーとオーガニックミルク、シュガーケーンで作る「ニューオリンズ」は別格。ミルク感がありつつもスッキリした舌当たりが実に印象的。