
フランクフルトから鉄道で約1時間。ドイツ・メルヘン街道の中ほどに位置する、
緑豊かな丘陵に包まれたマールブルクは、若者が集う活気ある大学都市。
巡礼地として名高いエリザベート教会や、石造りの建物が連なる旧市街は、
歩くたびに歴史の重みを語りかけてくる。
父の跡を継ぎ官僚になることを目指して、グリム兄弟はマールブルク大学で法律を学んだ。
けれど、在学中に出会った一人の教授の影響で、彼らの関心は次第にドイツ古文学や民間伝承の世界へと向かっていく。ここで芽生えた好奇心が、後の『グリム童話』誕生へとつながっていった。

旧市街には、童話に登場するような木組みの家が並び、
グリム兄弟ゆかりのオブジェが街のあちこちにひっそりと潜んでいる。
屋根に座るカエルの王様、城壁に飾られた白雪姫の鏡──
そんな“物語のかけら”を探しながらの街歩きは、まるで童話のページをめくるようだ。

本のオブジェに留まるてんとう虫。グリムの小径のアイテムかと思いきや本物のてんとう虫でした。
ここではリアルもおとぎに見えてくる。

ベンチで昼寝するねこにゃん。愛らしい顔にどっしりとした体が愛嬌たっぷり。
バックショットはまるで「ねこバス」だね。グリムとジブリの共演!

公園ではリスが枝から枝へと飛び跳び回っていたので、カメラを向けると動きが止まり、「はっ?」と言わんばかりにこちらをガン見していた。

マールブルクは学園都市だけあって、街のあちこちにカフェが軒を連ねている。
そのなかから選んだのは、坂の途中に立つ「Cafe Vetter」。
扉を開けるとショーケースには、色とりどりのケーキやチョコレートがずらりと並び、甘い香りがふわりと漂う。
テラス席からは街を一望でき、ドイツ伝統のアップルシュトゥルーデルの素朴な甘さが心をほぐしてくれる。
店内はアットホームで温かい空気に包まれていた。
テーブルにあったお知らせによると、ここは障がいのある人々を雇用し、自立した生活の場を提供しているという。
注文を取った青年も、ケーキを運んできた女性も、本当に楽しそうに働いていた。
その笑顔が今でも忘れられない。
童話の街に息づく“やさしさ”は、こんな日常の中にも確かにある。




写真は左上から時計回りに勇ましいちびの仕立て屋に登場するハエ、
シンデレラのハイヒール(巨人!)、白雪姫の魔法の鏡、七匹のこやぎ。
街中に点在するグリム兄弟ゆかりのスポットを結ぶ「グリム兄弟の小径(Grimm-Dich-Pfad)」には、
全部で15ヵ所のアイテムが点在する。兄弟が学生時代に暮らした家も、
旧市街の一角に静かに残されている。
なかには簡単には見つからない場所もあるが、
小道を辿るうちに、マールブルクの街そのものが一冊の童話のように感じられてくる。

夜の街もロマンチック♪
