ブルーマウンテンズの中心地となる町カトゥーンバから西へ車で1時間30分ほどの内陸に位置するジェノラン・ケーブ。
ここもブルーマウンテンズ国立公園内にあり、直線距離の道はないのでぐるっと回って行くことになる。
ジェノラン・ケーブは約3億4千万年前に形成された世界最古の鍾乳洞として知られる。桁違いのスケールの鍾乳石をはじめ、地球で初めて光合成により酸素を作り出すシアノバクテリアの活動によって造られた、今も生きるストロマトライト、近くの池では野生のカモノハシも生息する。ここは太古の世界が垣間見られるミラクルな場所なのだ。
ジェノランケーブには全部で11の洞窟があり、それぞれのツアーが設定されていて、チケットオフィスの前に掲示されているツアーに参加して鍾乳洞内を見学する。チケットオフィスで希望のツアーを購入するか、HPからでも購入可。所要時間は1洞窟につき大体1-2時間。スタート時間はそれぞれ異なるのでうまく組み合わせて参加する。
オリエント・ケーブは純白の鍾乳石が多く、一般公開している鍾乳洞の中でも一番美しいと言われている。岩壁に取り付けられた秘密の扉をくぐっていくとそこはすでに鍾乳洞。扉ができる前はぐるっと回って5時間かかったそうだ。
洞窟内はペルシャ、エジプト、インドと3つの空間がある。最初のペルシャでは無数のシャンデリア。ゴージャスなイメージからオリエントとなったのだろうか。エキゾチックな名前のおかげもあり、ファンタジーな世界にきたみたいで気分も盛り上がる。
エジプト部屋の「クレオパトラのカーテン」と呼ばれる高さが8メートルのカーテン状の鍾乳石。8万年以上の歳月をかけて現在も形成中。
つらら石と石筍がもうすぐくっつきそうだ。天井からぶら下がるつらら石が伸びる速さは、100年以上で1cmという。逆に天井に向かって伸びる石筍はその3倍ほどの時間がかかると言われているので、あと500年後にくっついて石柱になる計算。
インド部屋にある巨大なクラゲのような姿をしたインディアンキャノピーはジェノランケーブで最も美しいと言われ、ジェノランケーブのロゴにもなっている。
地球最古の生命体とも言われるストロマトライトが生息するネトル洞窟。この洞窟は個人で自由に行く事ができるが、環境保護のため案内板がないので訪れる人も少ない。
現段階で生きているストロマトライトが見られるのは地球上で3ヶ所しかないそうな。ストロマトライトといえば、オーストラリア西部のシャーク湾が有名だが、山の中の洞窟でも生息しているとは知らなかった。
この一帯はその昔、浅瀬の海だったことがわかっている。海の中で作られた石灰岩が地上に隆起し、そこに雨水が染み込み洞窟を作った。
岩に張り付いた堆積層がストロマトライト。まるでセミエビ。クレイバック・ストロマトライトと呼ばれる非常にまれなタイプ。シアノバクテリアが石灰岩の表面に生息し、光が差し込む洞窟の口に向かって成長するそう。エビの背に見える薄い緑色をしたものがシアノバクテリア。石灰岩から染み出した水分に含まれる二酸化炭素を利用して光合成を行い、酸素を生み出している。現在も生命体として活動しているというから本当に驚きだ。
最古のストロマトライトについては諸説あるが、少なくとも20億年以上前に出現し、地球上で初めて光合成によって酸素を作り出す能力を獲得したと考えられている微生物で、地球最古の生命体とも言われる。つまり、わたしたちの原点なんだ。
ジェノラン・ケーブの入り口にあるブルー・レイクでは2頭のカモノハシが行ったり来たり。夕飯の時間だったのか潜ったり、顔をあげたり悠々といつまでも泳いでいた。
ふさふさの毛で覆われているのにくちばしがあり、手足には水掻き。さらに母乳で子育てをする哺乳類なのに卵を産むのだから、普通じゃない。ここには数億年単位の昔から変わらない生物が、深い峡谷に守られるように命を繋いできた奇跡の場所なのだ。
ブルー・レイクという名前がついている通り、池の水は石灰岩が含まれているため光の加減で青色に見える。この時はすでに夕方で太陽は隠れていたため、深い緑色だった。
池の奥の畔にはニュー サウス ウェールズ州国立公園のロゴにもなっているコトドリの夫婦が仲良くエサ探しをしていた。コトドリはモノマネの天才で、他の鳥の鳴き真似から人間の赤ちゃんの鳴き真似やカメラのシャッター音まで聴こえる音を忠実に再現してしまう絶対音感の持ち主。いつかモノマネ聞いてみたい。
1897年に建てられたビクトリア朝のジェノラン・ケーブ・ハウスはジェノラン・ケーブのアイコニックな宿泊施設。ニューサウスウェールズ州立遺産登録簿に登録されている。クラシカルな山荘といった感じで趣がある。グランドダイニングルームでのディナーも素敵だ。